SYNAPXIS INSIGHTS / 04
①では、外国人の行き先を決める構造が12年間動いていないことを見た。日本人の側は動いている。人口の効き方が0.71から0.87へ上がり、宿泊が県の人口で説明できる部分が増えた。では、その裏で何が起きたのか。
県の人口と東京からの距離だけを使って、各県の日本人宿泊者数を予想する。その予想に対して実際が何倍だったかを見れば、人口や立地では説明できない、その県固有の引力を測ったことになる。1.0なら予想どおりだ。
2013年に予想の1.6倍以上あった県は、沖縄、長野、静岡、京都、山梨、福島の6つ。このうち長野、静岡、京都、福島は2025年までに位置を下げた。上がったのは沖縄と山梨だけである。一方で日本人宿泊の上位5県が占める割合は27.1%から31.8%へ上がっている。旅先として選ばれてきた県の優位が薄れ、人口の多い県に寄ってきている、と読める。
下がった時期は県によって違う。京都は1.97倍、1.92倍、1.51倍で、落ちたのはコロナ後だ。長野と静岡は12年かけて緩やかに下がっている。沖縄は2013年から2019年で2.73倍から3.38倍へ上がり、そこからは横ばい。上昇はコロナ前に起きていた。
最も低いのは埼玉県の0.3倍で、この位置は12年間ほとんど動いていない。東京に隣接し、泊まらずに帰れてしまう県だと読めるが、それはこの計算の外にある話でもある。
京都が下げた理由として、外国人が増えて日本人が泊まれなくなった、という説明はしやすい。だが46県で確かめると、その形にはならない。
2019年から2025年にかけて、外国人の伸びと日本人の増減の相関はマイナス0.11。押し出しが起きているなら点は右下がりに並ぶはずだが、並ばない。2013年から2019年で見ても同じである。
実際、日本人が大きく減った県のうち、秋田は外国人がほぼ横ばい、佐賀は外国人も30%減っている。逆に外国人が169%増えた愛媛でも、日本人の減少は9%にとどまる。日本人の減少は、外国人とは別の理由で起きている。
予想の何倍か、という数値は、人口と距離という2つの要素だけを取り除いた残りである。気候、交通、宿泊施設の数、価格、災害の影響は、すべてこの残りの中に混ざったままだ。京都が下げた理由が宿泊費なのかどうかも、ここまでの計算では確かめられない。
また、増えた宿泊が出張なのか帰省なのか観光なのかを、この統計は区別しない。人口の効き方が1.0に近づいたことを、旅行需要の変化とだけ読むのは行き過ぎになる。
この計算で説明できなかった部分に、何が入っているのか。宿泊費の水準、宿泊施設の数、そして宿泊者数そのものの増減。③ではそこを扱う。
①を読む インバウンドは5.4倍になったが、行き先の構造は変わっていない
観光庁「宿泊旅行統計調査」(2013年・2025年は年の確定値、2019年は2025年確定値に付されている2019年比から復元)、総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)をもとに作成。東京都は①と同じ理由で除いている。
46県のうち19県が倍率を下げ、27県が上げている。名前を挙げた6県は、2013年の時点で予想の1.6倍以上だった県である。距離は県庁所在地間の直線距離。
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