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SYNAPXIS INSIGHTS  /  04

旅先として選ばれてきた県の優位が、薄れている

2026年8月 | 都道府県別の宿泊者数を読む ②

①では、外国人の行き先を決める構造が12年間動いていないことを見た。日本人の側は動いている。人口の効き方が0.71から0.87へ上がり、宿泊が県の人口で説明できる部分が増えた。では、その裏で何が起きたのか。

予想の何倍か、で並べ直す

県の人口と東京からの距離だけを使って、各県の日本人宿泊者数を予想する。その予想に対して実際が何倍だったかを見れば、人口や立地では説明できない、その県固有の引力を測ったことになる。1.0なら予想どおりだ。

旅先として選ばれてきた県の、位置の変化 日本人の延べ宿泊者数 46都道府県 東京都を除く 県の人口と東京からの距離だけで予想した宿泊者数に対して、実際が何倍だったか。 1.0なら予想どおり。上にあるほど、人口の割に多く泊まられている県。 0.3倍 0.5倍 1倍 2倍 3倍 2013年 2019年 2025年 沖縄 3.4倍 山梨 2.3倍 長野 2.3倍 静岡 1.7倍 京都 1.5倍 福島 1.4倍 埼玉 0.3倍 位置を下げた県 位置を上げた県 名前を付けたのは、2013年の時点で予想の1.6倍以上だった6県(赤と青)と、全県で最も低い埼玉県(灰)。他は薄い線。 46県のうち19県が倍率を下げ、27県が上げている。出典 観光庁「宿泊旅行統計調査」、総務省「人口推計」。 © 2026 SynapXis Inc.

2013年に予想の1.6倍以上あった県は、沖縄、長野、静岡、京都、山梨、福島の6つ。このうち長野、静岡、京都、福島は2025年までに位置を下げた。上がったのは沖縄と山梨だけである。一方で日本人宿泊の上位5県が占める割合は27.1%から31.8%へ上がっている。旅先として選ばれてきた県の優位が薄れ、人口の多い県に寄ってきている、と読める。

下がった時期は県によって違う。京都は1.97倍、1.92倍、1.51倍で、落ちたのはコロナ後だ。長野と静岡は12年かけて緩やかに下がっている。沖縄は2013年から2019年で2.73倍から3.38倍へ上がり、そこからは横ばい。上昇はコロナ前に起きていた。

最も低いのは埼玉県の0.3倍で、この位置は12年間ほとんど動いていない。東京に隣接し、泊まらずに帰れてしまう県だと読めるが、それはこの計算の外にある話でもある。

外国人に押し出されたわけではない

京都が下げた理由として、外国人が増えて日本人が泊まれなくなった、という説明はしやすい。だが46県で確かめると、その形にはならない。

外国人が増えた県で、日本人が減ったわけではない 46都道府県 2019年から2025年の変化 東京都を除く 押し出しが起きているなら、点は右下がりに並ぶはずである。実際には並ばない。 2つの変化率の相関は-0.11。偶然でも出る範囲にとどまる。 -25% +0% +50% +100% +150% -25% +0% +15% 京都 佐賀 大阪 愛媛 沖縄 石川 福島 秋田 外国人の延べ宿泊者数の変化 → 日本人の延べ宿泊者数の変化 → 名前を付けたのは、外国人の伸びが大きい県と、日本人の減りが大きい県。 出典 観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年は年の確定値、2019年は同資料の2019年比から復元)。 © 2026 SynapXis Inc.

2019年から2025年にかけて、外国人の伸びと日本人の増減の相関はマイナス0.11。押し出しが起きているなら点は右下がりに並ぶはずだが、並ばない。2013年から2019年で見ても同じである。

実際、日本人が大きく減った県のうち、秋田は外国人がほぼ横ばい、佐賀は外国人も30%減っている。逆に外国人が169%増えた愛媛でも、日本人の減少は9%にとどまる。日本人の減少は、外国人とは別の理由で起きている。

この計算が示していないこと

予想の何倍か、という数値は、人口と距離という2つの要素だけを取り除いた残りである。気候、交通、宿泊施設の数、価格、災害の影響は、すべてこの残りの中に混ざったままだ。京都が下げた理由が宿泊費なのかどうかも、ここまでの計算では確かめられない。

また、増えた宿泊が出張なのか帰省なのか観光なのかを、この統計は区別しない。人口の効き方が1.0に近づいたことを、旅行需要の変化とだけ読むのは行き過ぎになる。

残りの中身を、次に開ける

この計算で説明できなかった部分に、何が入っているのか。宿泊費の水準、宿泊施設の数、そして宿泊者数そのものの増減。③ではそこを扱う。

用語

予想の何倍か
県の人口と東京からの距離だけで宿泊者数を推計し、実際の値がその何倍だったかを示したもの。統計でいう残差を、読みやすい倍率に直している。
相関
2つの数値の連動の強さを示す指標。0に近いほど関係がなく、プラス1やマイナス1に近いほど強く連動する。

出典

観光庁「宿泊旅行統計調査」(2013年・2025年は年の確定値、2019年は2025年確定値に付されている2019年比から復元)、総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)をもとに作成。東京都は①と同じ理由で除いている。

46県のうち19県が倍率を下げ、27県が上げている。名前を挙げた6県は、2013年の時点で予想の1.6倍以上だった県である。距離は県庁所在地間の直線距離。

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